こんにちは。DeFi牧場のおーじぃ(@DeFi_Ranch)です。
無料で制限なく利用できるテキストは、時としてSNS上でのコミュニケーションを荒廃させがちです。
テクノロジーが進化し、音声や動画でのコミュニケーションが取りやすくなった現代、なぜ人間によるテキスト・コミュニケーションは依然としてなくならないのでしょうか?
7年前に開発された「LetterPot(レターポット)」というユニークなプラットフォームが、再び利用者数を増加させています。
限られた文字数の価値を見出すことで、何気ないテキストのやり取りに新たな可能性を生んでいます。
この記事では、文字に経済的価値を持たせ、通貨としての感謝の言葉をギフトする事ができる革新的な「レターポットの世界」について、考えてみたいと思います。
レターポットとは?
レターポットは、言葉がギフトされる画期的なサービスです。
言葉は単なる抽象的な概念に過ぎないという考え方に挑戦し、文字を通貨として所有・交換することで、その価値を実感させています。
|用語解説
・レターポット:サービス全体の名称
・レター :①文字(通貨)の単位、②送信するメッセージ(いわゆる手紙)
・Ciao!(チャオ):1クリックであいさつ(5レター)を送信する機能
レターポットの由来
2017年に始まったレターポットは、シンプルかつ深遠なコンセプトから生まれました。
古来より、人々は感謝や敬意を表現する手段として、贈り物を贈り合ってきました。しかし、時代の変化とともに、その贈り物が相手にとって不要であり、負担となることも多くなってきました。
この社会的課題を解決すべく、レターポットの考案者は、贈り物の価値を根本から見直し、その本質は「贈り物にかける労力」にあると考えました。
そして、贈り物の金銭的な価値と時間的な価値(=労力)を可視化するために選ばれたのが「文字」だったのです。
レターポットの仕組み
レターポットの仕組み
レターポットの核となるのは、ユーザーが所有するレター(文字通貨)の範囲内で、メッセージを送信できるというシンプルな仕組みです。
レターは、100レター550円(税込)で購入するか、誰かからギフトされることで入手します。
基本的には、1通5レター(25円)の切手代と1文字1レター(5円)のテキスト代で、メッセージを送信することができます。
例えば、次のようなイメージです。
- いつも支えてくれて本当にありがとう(17文字)
= 110円(25+85) - 忙しい中を時間を割いてくださり、本当にありがとうございました。(31文字)
= 180円(25+155) - この度は私の提案を採用してくださり、心より感謝申し上げます。あなたのおかげで新たなステップを踏み出すことができ、とても励みになっています。(69文字)
= 370円(25+345)
また、「Ciao!」機能を使うことで、好きな相手に1クリックで「Ciao!」と気軽なあいさつ(5レター)を送信することができます。※Ciao!の手数料は1レター(5円)
レターの入手方法
レターは、レターポット公式サイトで購入することができます。
100レター | 550円 |
1,000レター | 5,500円 |
5,000レター | 27,500円 |
また、自身のレターポットのアドレスを共有することで、他の人からギフトとして受け取ることもできます。
私のレターポットはコチラ👇
https://letterpot.jp/users/88108
レターの切手代
レターポットの経済モデル
レターポットは「4ヶ月」という比較的短い有効期限が設定されています。
これは資金決済法で「前払式支払手段」とみなされる“有効期限6ヶ月以上”に該当しないため、という理由もあると思いますが、もう一つの重要な意味があります。
レターポットの経済モデルは、シルビオ・ゲゼルの理論、とりわけ彼の「フライゲルト(自由貨幣)」の概念に触発された「ヴェルグルの奇跡」と呼ばれる社会実験に基づいています。
1932年、世界恐慌まっただ中のオーストリアの小さな町・ヴェルグル(当時の人口約4,000人)で行われた実験では「腐るお金」が導入されました。
町の労働者の給与として発行されたお金(手形)は、毎月1%分の印紙を購入しなければ維持できないため、活発に利用された結果、経済が活性化し、税収が増え、失業率も低下しました。
この実験は、周辺地域からも高い評価を受け、各地の市長が集まる説明会では全員から「導入したい」との賛同を受けました。
しかし、オーストリアの中央銀行から国家通貨に対する脅威とみなされ、1年後には強制的に中断されてしまいました。※その裏には高利貸しで暴利を貪る富豪たちの圧力もあったとか…
この実験結果は、高く評価されている一方で、あくまで短期的、小規模、特殊な条件下での成功であり、あらゆる状況において万能な手段ではないとも言われています。
レターポットを使うメリット
レターポットは、物質的価値よりも感情的価値を重視します。
主なメリットは次の4つです。
ギフトとしての利便性
被災地に届く千羽鶴や新婚夫婦の名前入りグッズなど、物質的なギフトは、受け取り手にとって不要な物も多く、管理や処分が困難になることもあります。
レター(文字)は、物理的スペースを必要とせず、時間や場所を選ばずに送ることができ、受け取り手側の管理や保管などの手間が不要です。
感情的価値の数値化
レターを使うことで、感謝や愛情などの重みを数値化して実感することができます。
贈られたメッセージの文字数が履歴として残るので、メッセージの送り主の気持ちの総量が俯瞰しやすくなります。
金銭的な価値だけでなく、その労力も含めて、ギフトの贈り主の感情的価値を測る上で、文字はとても効果的なツールだなと感じます。
経済的価値の創出と利用の柔軟性
レターには金銭的な価値が付与されていますが、日本円に換金することはできません。
ただし、商品やサービスと交換するための実験が行われています。
例えば、キングコング西野さんのネットラジオ(Stand.fm)の「番組スポンサーになれる権」が、1放送1,000レター(5,000円相当)で交換されています。
以前は通販サイトで同額で販売されていた「スポンサー権」は、月に数件の販売ペースでしたが、レター払いに変更した途端に、ほぼ毎日ペースで利用されています。
また、X(Twitter)でのレター配りオジサン実験では、引用ポストの報酬として5レター(Ciao!)がプレゼントされ、通常のポストの数倍となる100件以上の引用ポストが発生しました。
この手法は、X公式の広告価格の相場である50〜100円の1/2〜1/3程度のコストであり、コストパフォーマンスの高い宣伝活動を行うことができたため、同じ手法を活用した #レター配りオジサン が急増しました。
レターの交換はまだ実験段階であり、現時点での選択肢はあまり多くはありません。
今後、レターの交換先がさらに増えることで、感謝の報酬としてレターを受け取った人が、自分のニーズに合わせてレターを使うことができる未来が来ればステキだなぁと思います。
【レター配りオジサン実験】
— 西野亮廣(キングコング) (@nishinoakihiro) March 20, 2024
「ご自身のレターポットのリンク」&「#レターポット」をつけて、このポストを引用ポストしてくださった方全員に5レター(ciao!)をプレゼントします。
(※本日23時59分まで) pic.twitter.com/kbCHa2MgXD
信用の数値化
レターポットのプロフィール画面では、レターを送受信した文字数や人数の総数が公開されています。
この数値、特に受け取ったレター数や受け取った人数は、ユーザーの信用や評価を表しているとも言えます。
つまり、レターを贈ることは、レターを贈った相手の信用を高めることにも繋がるので、評価・信用経済において、相手に対しプライスレスな価値をプレゼントすることになるとも言えます。
これらのメリットにより、レターポットは従来のコミュニケーションやギフトの交換を超えた新しい価値を提供し、より豊かで持続可能な人間関係を築く手助けとなります。
レターポットの社会的インパクト
コミュニケーションの強化
無料で気軽にコミュニケーションが取れるこの時代において、文字に価値(金銭的価値)を与えることで、新鮮なコミュニケーションの選択肢を提供します。
自分が所有する限られた文字数の中から、相手に対して経済的利益を伴う感謝のメッセージを贈ることができ、より強い関係性を築くことができます。
さらに4ヶ月という短い有効期限により、贈られたレターは貯め込まれることなく使用され続けることで、コミュニケーションの活性化を促します。
寄付文化の醸成
レターポットは、個々のコミュニケーションに影響を与えるだけでなく、寄付文化を醸成する可能性も秘めています。
レターポットの「公開ポット」機能は、自然災害などの被災者に対し、公開で応援のメッセージを受け付ける機能です。
届けられたメッセージは一般公開され、受け取ったレターは、運営会社を通じて現金化され、義援金として被災者支援に活用されます。
これらの実例は、LetterPotが単なるコミュニケーションの枠を超え、感情的なつながりを育み、コミュニティ支援を促進し、自己表現や他者との交流方法にユニークな次元を加えていることを示しています。
レターポットの将来
レターポットの考案者であるキングコングの西野亮廣さんは、2024年4月公開の動画内のインタビューで、次のように語っています。
コミュニティでなんかやるっていう世界に入るのは間違いなくて、そん時の報酬の形っていうのは絶対探らなきゃいけない。それが“お金”なのか、“トークン”なのか、“レター”なのか?何なのかわかんないけど、報酬の形を見つけないことには、面白いことにはならないだろうな。
【文字が”お金”に!?】西野が仕掛ける渾身のギャグ!! – YouTube
お前つまんねえなと思われるかもしんないですけど、あんま興味がないんだよね広げるの。なんか友達同士でやってるぐらいが楽しくて、これを代々的にしてやろうとは思ってないね。でもみんなが似たようなものを作ればいいのにと思ってる。別にチムニータウンが儲かるためにやってるようなサービスでもないから。
【文字が”お金”に!?】西野が仕掛ける渾身のギャグ!! – YouTube
レターポットに対し、一定の期待は抱きつつも、趣味としても楽しんでいるようです。
レターポットの始め方
レターポットのアカウント作成は無料。
次の6ステップで簡単に始めることができます。
① レターポットにアクセス
②「レターポットに登録」ボタンを押す
③「利用規約」を確認
④ 利用するソーシャルログインを選択
・Facebook
・X(Twitter)
⑤ 連携アプリ認証(スライドはXの場合)
⑥ 必要事項を入力
※2024年4月時点の利用規約では、必ずしも本名を登録する必要はなさそうです。
以上で、アカウント登録完了です!
注意事項
※ 購入及び保存したレターを現金に換金することはできません。
※ レターは新規発行日から4ケ月以内に利用しない場合は失効されます。
→新規発行日=購入日 or 受信日
レターポットの変革の旅を振り返る
レターポットの歩みを振り返ってみると、このプラットフォームが単なる斬新なコミュニケーション・ツールでないことは明らかです。
レターポットは言葉の価値を再認識し、文字を通貨に変えることで、私たちがどのように言葉と接し、自分自身を表現するかという新しい次元を切り開いたのです。
レターポットは、人間のコミュニケーションの最も基本的な文字のやり取りでさえも、再構築し、再発明することができることを示してくれました。
この歴史的プロダクトが世間一般に受け入れられるかどうかはわかりませんが、この世界類まれな不可思議サービスの利用者(理解者)が、数万人もいる日本という国は素晴らしいなと実感する今日このごろでございます。
ではまた!
レターポット関連動画
2018年動画解説
レターポット
開発当時の会議の様子
2024年動画解説【文字が”お金”に!?】
西野が仕掛ける渾身のギャグ!!
サービス開始から7年目の現在地
参照URL
|Mises Daily “A Free Money Miracle?”
https://mises.org/mises-daily/free-money-miracle
|アーヴィング・フィッシャーのスタンプ紙幣(補完通貨)の意義
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R000000004-I029508191